ヒガンバナ
東京都世田谷区砧公園
昔、九州出張からの帰り道に、新幹線の窓から見た金色の稲穂と真紅のヒガンバナが彩る秋の景色が忘れられない。長く離れていた家に帰れるというセンチメンタルな気分と、それを祝福するかのような金と赤。おかえり、おかえり、と窓の外の景色全てが手を振っているように見えたことを思い出す。
そんなこともあって、田んぼとヒガンバナの組合せには人一倍の思い入れがあるのだが、東京ではもうそんな景色はほとんど見ることができなくなってしまった。田んぼが無い事ももちろんだが、わずかに残る田んぼでも、必ずしもヒガンバナに逢えるというものでもなくなっているようなのだ。
次にヒガンバナを見られるところといえば、薄暗い雑木林の中やお墓、道端の石仏に寄り添うように咲くヒガンバナはちょっと薄気味悪い。
砧公園の中ほどを流れる谷戸川沿い、四ノ橋付近の雑木林にヒガンバナが群れている。今日はもう花時を過ぎ、一部には葉もなく花も落とした茎だけがシュッシュと生えた異様な光景が広がっていた。咲いても咲き終わっても、ヒガンバナはちょっと怖い。
自転車乗りにはファミリーパークを一周するサイクリングコースの南東のコーナーがいい。切り通し状になったカーブの、まず最初に右手の斜面にヒガンバナが現れる。カーブを曲がるにつれて左の斜面にも現れたヒガンバナの群生を見ながら下り坂を走り抜けていく、その景色の移り変わりが素晴らしい。サイクリングコースは一方通行なので、この景色を見るためだけに二周してしまった。