シーベルト
福島県双葉郡楢葉町大字前原字付念田16番地 前原地区集会所跡の線量計
ある日突然身の回りにあふれ出してきた「シーベルト」にわたしは戸惑った。
天気予報で耳慣れていたミリバールが、ヘクトパスカルに変わった時も唐突だったが、シーベルトも突然われわれの前に現れた。今まで、それを表していた言葉はなんだったのだろう。わたしにはそれが思い出せない。
子供の頃見ていた怪獣映画には「ガイガーカウンター」なるものが登場して、放射能に汚染された場所では、ガガガガガという雑音を発していた。あの音と放射線量の関係がどうなっているのか、放射能を検出して振り切れた針の指す値がいくつだったのか、単位はなんだったのか、説明されたことはなかった。
放射能をまき散らしながらのっしのっしと歩き回る怪獣に対する自衛隊員は防護服を着ることもなく、全住民が避難して無人になった町がスクリーンに描かれることもなかった。遠い太平洋のどこかで水爆実験があると僕たちは、放射能を含んだ雨に濡れるとハゲになると言いながらも、それをまじめに考えることもなく夕立の中で笑い転げていたっけ。
広島・長崎での被爆経験を持ち、第五福竜丸の被曝事件も体験していながら、われわれの関心は爆弾としての原子力の脅威に偏っていなかっただろうか。放射能の脅威に対して、そもそもその程度を測る単位も知らないほどに鈍感に過ぎたと、2011年のあの日以来痛感している。
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