女川いのちの石碑 3
宮城県牡鹿郡女川町宮ケ崎字宮ケ崎60(山祇社)
石碑の後ろに海が見える。
碑文には「ここは、東日本大震災津波到達点より高い」と刻まれている。つまり、津波はここまで来なかった。その言葉が信じられないぐらい、海が間近に迫っている。
海沿いを走る国道398号線の外側、女川漁港の主要部分はほとんどが埋立地であるらしい。埋め立て以前は、宮ケ崎の名が示す通り海に面して断崖絶壁がそそり立ち、その上にお宮が祀られていたのだろう。
あの日は、まさにその昔に返ったように、大波がこの山祇社の足元に打ちつけていたに違いない。それがいつもの風景なら風光明媚な景勝地であるけれど、そんな生やさしい景色ではなかった。わたしにはその情景に思い至る想像力も、その時の映像を探して見返す勇気もないけれど、まさに神仏にすがる思いで人々はこの境内に逃げ込んだことだろう。
石碑にはそれぞれ異なる句が添えられている。この碑には「ただいまと 聞きたい声が 聞こえない」と彫られていた。