代田の丘の61号鉄塔
東京都世田谷区代田2-4-10
北沢川緑道から見上げると、丘の向こうに、巨大ロボのような高圧鉄塔が顔を覗かせている。のっしのっしと歩いてきて、手前に見える家を踏みつぶしそうだ。
緑道に設置された説明板に寄れば、この鉄塔の下にかつて、詩人の萩原朔太郎の家があったのだという。その娘・葉子の小説にも登場する、おそらく日本でも最大級の「文学的記念碑」なのだ。
ドーナッツ跡の付いた急坂を登って近づいてみると、鉄塔は住宅に囲まれて窮屈そうに立っていた。名札には「駒沢線No.61」とある。「鉄塔 武蔵野線」(銀林みのる)の主人公・アキラの命名に寄れば、碍子が電線の向きに引っ張られている「女鉄塔」だ。
その碍子の連なりが、両脇にかかえたミサイル兵器のように見えた。眺めの良い高台に立って、攻め来る敵を迎え撃つガーディアン。朔太郎のような詩情のない無粋なわたしは、そんな想像をしながら見上げる、キラキラ光る鉄塔から目が離せなかった。