坂口安吾文学碑
東京都世田谷区代沢5-1-10 北沢川緑道・代沢小学校脇
安男でもなく慎吾でもない。「安吾」という名前は、ちょっと取っつきにくいイメージがある。しかも代表作が「堕落論」「白痴」ときてはなおさらだ。
その坂口安吾の文学碑が北沢川緑道に建っている。いつも自転車通勤の時にはその前を通っているのだけれど、今の今まで気付かずに通り過ぎていた。気がつかなかったのは、安吾が取っつきにくいからではない。どう見ても小学校の裏門にしか見えない格好をしているからだ。
煉瓦造りの門柱の間には、彼の作品「風と光と二十の私と」から引いた「人間の尊さは 自分を苦しめるところにある」という文章が書かれたプレートが置かれている。その小説の舞台となった大正14年(1925)には、この小学校のまわりは『アワシマサマ』と『学用品やパンやアメダマを売る店』以外には何もない『広茫かぎりもない田園』だったという。
北沢川緑道の桜はピークを過ぎ、碑の前の水路にはたくさんの花びらが散っていた。安吾は、満開の桜の下では誰もが気が変になる、と「桜の森の満開の下」に書いている。この碑を見つけたのが満開を過ぎてからで良かった。